降り止まぬ春雨にこぼれて咲いていた

この場所に似合わない沈丁花


甘い甘い幻のような

香りを漂わせて

深い深い意識の底に

面影を残した


美しいその身体 棘は無くとも

臆病に手を伸ばしかけたまま


月明かりに照らされて

ゆらり 花びら揺れる

視線を知ってか知らずか

一つ影が踊る


蕩け行く微笑みはまるで

夢見の中

名前をそっと呼んだ

聞こえないように


現と夢も分からず

ただ匂いに溶かされ

薄れる意識のせいか

二つ影が踊る


降りしきる春雨に隠して

赤く染める

名前をそっと呼んだ

手を伸ばせば


蕩け行く微笑みはきっと

夢見の中

白い光に眩ませて

もうこのまま